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京都認知行動療法カウンセリングルーム  

非機能的思考記録表(DTR)

まとめとして、認知療法の創始者であるアーロン・ベックの娘であり、自らも著名な認知行動療法の実践者・研究者であるジュディス・ベック(「認知療法実践ガイド 基礎から応用まで」星和書店)の述べている認知行動療法の原則を示します。

原則1:認知療法は、全ての話題と患者の抱える問題を、常に認知的視点から概念化し、それに基づいて実施される。

原則2:認知療法は、確固たる治療同盟を重視する。

原則3:認知療法は、協同作業と治療への積極的関与を重視する。

原則4:認知療法は、問題に焦点を当て、目標思考的である。

原則5:認知療法は、まず、〈現在〉を強調する。

原則6:認知療法は心理教育的であり、患者が自分自身の治療者となることを目指す。そして、再発予防を重視する。

原則7:認知療法は、治療の回数や期間を制約のあるものとして考える。

原則8:認知療法は、セッションを構造化する。

原則9:認知療法では患者を教育し、患者が非機能的な思考や信念を自ら把握、検討し、それらに対応できるように誘導する。

このように自動思考が修正され、行動面や感情面での変化が起きるようになると、共通するテーマの状況と自動思考のパターンが明確になってきます。そうなれば認知的概念図におけるスキーマ(中核的信念・媒介信念)が、より明らかになってきます。スキーマの中心テーマは「私は出来が悪い」と「私は好かれない」というものに関連している場合が多いです。スキーマが同定されれば、スキーマに対する修正を試みます。自動思考の修正に用いてきた様々な技法にくわえ、発達史の検討や幼児期の記憶の再構成なども必要となります。スキーマへの介入が可能となると,クライアント自ら、治療計画を立て,実行するという流れができるように促されていきます。そうなれば,クライアント自身が自発的にさまざまな課題に取り組むようになり,「こんなことを試してみたらこうだった」と治療者に報告するようになります。その結果,スキーマは修正され、クライアントは自由に行動できるようになり,認知行動療法を自主的に行い,症状はさらに改善していきます。認知行動療法は本来自己治療であることをめざしており,治療継続への動機付けを高めていくことが重要です。それには,自己効力感の向上が必要です。そうすることで、クライアントが自ら治療目標を設定し,治療課題を作成,実行,評価できるようなります。

認知行動療法における行動的技法とは問題解決のための技法を習得する方法です。問題解決のために,具体的な行動を計画し,行動実行をおこない,その結果を検証する,というステップを繰り返すという問題解決技法が用いられます。認知療法認知において使用される行動的技法としてはリラクセーション法,認知行動リハーサル,イメージ法,ロールプレイ,モニタリング,コーピングカード法、暴露法、円グラフ法、イメージ技法、アサーション,社会技能訓練,読書療法,モデリングなどがあります。強迫性障害(OCD)には暴露反応妨害法,パニック障害には曝露法とリラクセーション,特定の恐怖症には曝露法,社会不安障害には曝露法とリラクセーションとアサーション,外傷後ストレス障害(PTSD)には曝露法またはEMDR,全般性不安障害(GAD)にはリラクセーションなどの不安対処法が構造化されています。

認知再構成法とは,ある状況における感情,自動思考を同定し,自動思考に検討・修正を加えることによって,感情の変化を促す方法です。
「自動思考」とは、ある状況に対して、無意識に素早く湧いてくる思考やイメージです。認知行動療法では特定の場面・状況(ストレス)において、ネガティブな感情・行動・生理的身体反応が引き起こされるには「自動思考」の影響であると考えます。つまり、自動思考に気付き、検討し、修正することができれば、同じ状況にあってもネガティブな反応を軽減したり、無くしたりすることが可能となるわけです。ストレスを感じる状況で「そのときどんなことが頭に浮かびましたか?」と質問することで、自動思考が把握できるようになりま。さらに「そのときどんな気分でしたか?」と考えることで自動思考とネガティブな感情との区別と自動思考が感情に与える影響についてクライアント自身が気づけるようになります。ある状況における自動思考が同定できるようになると、その自動思考を検討するようにします。自動思考の根拠や反証、自動思考にようメリットとデメリットなどを考えるようにします。その結果、より適応的で柔軟で現実的な考え方ができるようになります。これが「認知再構成法」です。この認知再構成法を行うために、非機能的思考記録表(DTR)をもちいることが有効です。

認知行動療法では、クライアントの抱える問題を、常に認知的視点から概念化し、それに基づいて治療計画が立てられます。「認知的概念化(ケースフォーミュレーション)」とは認知行動療法の視点からなされる診断のことです。特定の状況における感情,行動,身体状況からそれらに関連する自動思考(非機能的な思考・信念)を同定し,その背景にあるスキーマ(中核的信念および媒介信念)を推測します。例えば、不安障害の方には不安スキーマが存在し,不安スキーマが不安に関連した自動思考を引き起こし,これが不安症状をもたらすというのが,不安の認知理論です。不安に伴う認知は身体的危険か心理的危険を主題としています。身体的危険として代表的なものには,パニック障害(PD)における「心臓発作が起きるに違いない」という破局的思考などがあります。また、心理的危険として代表的なものには,社会不安障害(SAD)における「みんな私を嫌うだろう」などの恣意的推論などがあります。不安スキーマは,危険を過大視させ,恐怖の対象に注意を向け,以前の不安体験を選択的に想起させます。その不安を軽減するために回避行動などの安全希求行動(中和反応)を行うことで,症状が持続するのです。ですので、不安障害の方の認知的概念化を行う際には,不安を持続させている不安スキーマの存在に常に注意を払う必要があります。認知的概念化は図として提示し,クライアントと治療者が情報を共有しながら適宜検討・修正を行うことで,クライアント自身の自己理解を深めるとともに,治療を進める上での地図の役割を果たすことになります。認知的概念化はクライアントと治療者が共同して、問題を理解していくことが必要ですので、認知行動療法では、クライアントと治療者の間に、良好な信頼関係が築かれている必要があります。クライアントが治療について充分理解している必要がありますので、障害、認知モデル、治療の進め方について心理教育を行います。その上で、治療にて扱う問題を同定し、具体的な治療目標を設定します。

近年,認知行動療法のうつ病や全般性不安障害(GAD)、パニック障害、社会不安障害(SAD)、強迫性障害(OCD)、外傷後ストレス障害(PTSD)などの不安障害、物質乱用、摂食障害、カップル・夫婦間の問題、慢性疼痛、心気症などに対する有効性が、対照研究によって明らかとなってきています。ここでは、やや専門的になりますが、具体的な認知行動療法の進め方とその原則について説明します。認知行動療法では評価(アセスメント)認知的介入行動変容評価というように,相互にフィードバックを行いながら,治療が進んでいきます。具体的には,主に@認知的概念化,A認知再構成法,B行動的技法という3つの技法を組み合わせて、治療が進んでいきます。以下に、この3つの技法について説明しながら、認知行動療法の進み方を説明します。

         認知行動療法の進み方の原則
















      @認知的概念化 































     

 


      A認知再構成法 


















          














      B行動的技法















      Cスキーマへの介入 





















      Dまとめ

      





































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